
ニコニコ生放送で政治系の放送を流す。それはサブカル的なイメージが強かったニコニコ生放送の新たな挑戦だった。
ニコニコ生放送では、インターネットユーザーは政治に無関心という当時の既成概念に対して、ニコニコ生放送のユーザーは20代以上が大半を占めており、政治に対する興味がないのではなく、わかりやすく情報共有できる場や議論する場がないためにそのような見え方をしているのではないかという仮説を立てていた。また、同様にして日本の政治家たちはこぞってインターネットを活用した情報発信を模索し始めている時期でもあり、先見性のある政治家とニコニコ生放送の目論見が合致し、ニコニコ生放送で政治コンテンツの制作に乗り出すこととなった。最初は動画のサイトに政党チャンネルを作り、政治家の動画をアップロードすることから始まった。そして2009年9月には、大臣の記者会見を中継するようになる。当時、マスコミ他社で記者をしていた現ドワンゴ社員の亀松はその様子を、「何か面白いことをやり始めたな」と強い興味を持って見ていたという。
そして2010年3月、当時首相だった鳩山由紀夫氏の記者会見を中継し、ニコニコ生放送は世間の大きな注目を集めた。どんな会見もカットなしでリアルタイムに見ることができる、既存メディアにない新しい伝え方を持ったニコニコ生放送というものが、広く認知されるようになったのである。さらに事業仕分けの中継や政治家の討論番組など、放送番組が増えるにつれて、その存在感は増していく。
だがそうはいっても、まだまだ一般的にはマイナーな位置づけであったニコニコ生放送に、大きな転機が訪れた。民主党元代表、小沢一郎氏が行った会見の生放送である。
あの小沢氏が既存メディアを拒否し、ニコニコ生放送で会見をする。それはニコニコ生放送の存在価値が高く評価されたということ。社員たちは興奮した。ニコニコ生放送のロゴを背景にした小沢氏の姿が、あらゆるメディアで流されるのだ。確かに放送の反響はすごいものだった。これにより、それまでニコニコ生放送を知らなかった人たち、特に年配の視聴者における認知度は格段に上がったといわれる。
現在では、その影響力がさらに重要視されるようになり、多くの政治家がニコニコ生放送の政治討論番組などに出演している。また、政党や政治家がチャンネル生放送を利用し、自らの放送枠を直接持つことも増えている。
ニコニコ生放送が政治家と有権者の新しい関係を作り、社会を変えていく。そんな日が来るのは、そう遠いことではないのかもしれない。

